ドンキホーテ商事の冒険

成り行きまかせのTRAVELLERキャンペーン。
1106年から1107年のスピンワード・マーチ宙域はリジャイナ星域が舞台。
既成のシナリオやデータも使用しているが、基本的にはオリジナル。TACTICS誌やRPGMAGAZINE誌のジャーナルコーナー、サプリメントの60人のパトロンなども利用しているが、キャンペーンに混ざってしまって内容はそのままとはいいがたい。
既成のデータ設定にも、化夢宇留仁がゲームをする上で手を加えている可能性があるので、鵜呑みにすると危険。
用語辞典に載っているデータは、あらかた大丈夫の筈。


プロローグ

1106年156日リジャイナ地上宇宙港

辺境世界の大通りとでもいえるようなリジャイナのAクラス宇宙港はいつも人や、人でないものがうろうろして、ごったがえしている。

そんな中に妙な一角があった。

みんなが忙しげに、または楽しげに通り過ぎていくのを眺めつつ、白衣を着た高齢らしい男が立ち尽くしていた。その横には携帯用デスクにパソコンを据えて、若い女性が座っていた。
男のそばには立て看板が据えられ、新聞記事の切り抜きを中心に、何やらごちゃごちゃと書いてある。

まわりの人達はほとんどが、ちらりと目をやっただけで通り過ぎてゆくが、中には暇なのか、足を止めて看板と、立っている男の顔を見比べている人もいた。

看板にはこんなことが書いてあった。
TRAVELLER募集!!」
高名な元リジャイナ大学教授、F・マーキュリー博士の意義ある研究に協力して、あなたも仕事を手に入れ、更には歴史に名を残そう!!」

何とも胡散臭い。普通の人なら足を止めても、看板の内容を読めばすぐその場から立ち去る筈である。
しかし今日はしばらく前から、遠巻きにその一角を眺めている人影が4つあった。
4人はそれぞれ知り合いというわけではなかったが、共通するところがあった。
全員行く宛がなかったのだ。


アリス・ジャバワック
(プレイヤー/マッドハッター氏)

偵察局管理部資材課主任 7期
TDCS
585A99
044/1051ヴィリス生、男、55才

<ギャンブル-4><エレクトロニクス-4><コンピュータ-3><ハンドガン-3><管理-2><ブローカ−2><メカニクス−1><反重力機器-1><レーザー兵器-0>

(リボルバー9mmマグ)(年金cr8000)年金は妻子に渡されている。

アリス・ジャバワックは世を忍ぶ仮の名前である。本名はロラン・ローウェルという。
偵察局に入り、結婚し、まっとうに生きていた頃の彼には偽名など必要なかった。
しかしギャンブルにはまり、多額の借金を抱えてしまった彼は、家族を守るために計画離婚を実行。本人は行方不明ということにし、TDCSに新たな職を見つけ、仕送りをしていた。だがそれも偵察局時代の仲間と出会うことで失い、その後1月ばかりリジャイナのドヤを転々としていた。
今日彼はねぐらを後にして、ふらりと宇宙港にやってきた。ここしばらくはまた昔の自分を知っている者に会うのではないかと不安で近寄らなかったが、1月もたてばほとぼりも冷めているだろうし、やはり宇宙港はなにか新しい希望を見つけるには格好の場所だったのだ。


マルコ・ロイド
(プレイヤー/マルコ氏)

元陸軍中佐 3期
偵察局員 1期
78D686
330/1071ヒーヤ生、男、35才

<格闘-3><サブマシンガン-2><侵入-2><ライフル銃手-1><棍棒-1><爆発物-1><反重力機器-1><パイロット-1><車輪型機器-0>

主な産業が農業という平和な星ヒーヤで、男を磨くために陸軍に入った。12年勤め上げ、男を磨いた。
やはり一人前の男には知的なところも必要だと思い立ち、今度は偵察局に入隊。知的な男になろうとしたが、習慣とは恐ろしいもの、ますますその肉体が鍛え上げられた。
そうこうする内体力に衰えを感じ始めた彼は、現在の肉体を永遠に保ちたいという欲求に駆られ、アナガシックスを手に入れるべく旅にでることにした。
そうして偵察局を辞めた時、彼はリジャイナに駐留していた。
局の窓口で手続きを終え、そのまま宇宙港を歩いている内、妙な2人組が目に入ったのだった。


クルス・パーマー
(プレイヤー/S・S氏)

元人気ジャーナリスト 6期
3547D9
248/1063モーラ生、男、43才

<作文-3><車輪型機器-1><説得-1><通信-1><スチュワード−1><ギャンブル-1><社交-1><管理-1>

(印税cr7000)

地元モーラを中心に、人気ジャーナリストとして活躍していたクルス・パーマーだが、いまや路頭に迷う無職のおやじにすぎなかった。
元々意見の食い違いが多かった編集長と本格的にぶつかり、勢いで辞めるといってしまったのだ。はっと気づくとここリジャイナでは自分の名前を誰も知らない。出張取材中に辞めたのはまずかった。
考えてみれば編集長も引き留めるかと思いきや、何やら余裕で辞表を受理していたような気がする。きっとこうしてクルスがひどい目に遭うのを予想していたのだ。
クルスは不安と悔しさの入り交じった顔で、宙港ロビーを歩いていた。これからどうすればいいのか想像もつかない。
目の前に変な2人組が見えてきたのはそのときだった。


ジャニアス・フォン・ヴァルマーシュタット3世
(プレイヤー/悠宇太郎氏)

元帝国海軍中佐 5期
589CAC 男爵
144/1064ハーヴォゼット生、男、42才

<エンジニアリング-1><医学-2><宇宙服-2><リーダー1><ヘリコプター1><ハンドガン-1><フェンシング・フォイル-1><メカニクス−1><スクリーン-1><侵入-1><測量-1><宇宙船戦術-1><管理-1>

小惑星ハーヴォゼットを封土とするヴァルマーシュタット家の長男として生まれ、何不自由無く今まで生きてきたジャニアス。海軍に入ってもエリートコースで、ろくに危険な目にあったこともない。
そんな彼に悲しい知らせが届いた。父親であり、現ヴァルマーシュタット家当主が(名前は彼と同じで2世)重い病にかかり、コールドスリープ処置が行われたのだ。
ジャニアスにとってその知らせは悲しいだけではなく、自分が次期当主にならなければならないという宣告でもあった。
彼は突然不安に駆られた。今まで親の用意してくれた線路を何の不安もなく歩いてきた。その線路がいきなり消失し、これからは自分でそれをひいてゆかなければならないのだ。
ジャニアスはとりあえず海軍を辞めた。そして未知の世界へ歩み始めた。それは不安の多い選択だったが、自分が当主になるのに比べれば責任を負わないだけ楽な道だったのだ。

そうして4人は、F・マーキュリー博士(?)の胡散臭い研究協力者募集に引っかかったのだった。


どうやらF・マーキュリーその人らしい白衣を着た初老の男は、無口なのかほとんど口を開かなかった。
そのかわりその秘書兼助手と名乗る若い女性が、募集内容を解説していた。

彼女が言うには博士の研究はマンパワー・サイコヒストリーといい、歴史における個人の社会的影響を考察するものらしかったが、4人とも今一よく分からなかった。
研究協力者は仕事を斡旋され、その内容の記録を渡すだけでいいという。
詳しい話は博士の研究所で行うということだった。

いく当てもないし、とにかく行ってみることにする4人だった。

研究所は宙港街サブクレダのごちゃごちゃした通りにあった。
その建物は古く小さい2階建てで、どこかの事務所を借りているという風だった。大がかりな研究をやっていそうな雰囲気はどこにもない。
隣にはスポーツセンターのビルがそびえ、研究所をその影で包んでいた。

ここまで来て不安になった4人を、助手の女性エルザ・ボビットはにこやかに、そして少し強引に所内へ連れ込んだ。

中に入ってすぐ部屋になっており、小振りの応接セットがおかれ、その奥にパソコンの載ったデスクがあり、4人をソファに座らせて、エルザはそのデスクについた。
博士はその更に奥にあるデスクについたが、4人に興味がない風で、さっそく何やら書類をいじり始めた。
部屋の奥左には上への階段が見えていたが、外から見た感じではその先も大したものがあるようではなかった。

エルザがパソコンをいじりながら4人に希望の職種を聞いてきた。
どんな仕事があるのかと逆に聞いてみたところ、博士のコネクション経由でいろいろな仕事が集まってきているが、研究データの集め易さから、単発の仕事を主にそろえているらしかった。
仕事には危険度、経費、予想労働時間などが設定されており、中には法律すれすれのものもあるが、その分報酬は大きいという。
法律すれすれに興味を持ったアリスは、その中からいいのがないか聞いてみた。
一つリジャイナ以外の星で用事を済ます仕事があった。それも依頼人はある企業の大物で、名前は明かせないが報酬は最も大きいという。

目的地の方向だけ聞いて、それが故郷であるヴィリスの方向だと知ると、アリスは是非その仕事がやりたいと言い出した。
彼はもう2年以上も家に帰っておらず、最後に帰ったときに妻も子供たちもどこか雰囲気がよそよそしかったのが気になっていたのだ。送金も1年以上ストップしたままだった。不安になるのも無理はない。

エルザが4人共を登録しようとし、後の3人は難色を示したが、これもなにかの縁だと言うアリスに押し切られてしまった。

こうして4人のチームが結成された。名前はまだ無い。

エルザはビデオカメラと、記録用クリスタルを出してきた。
研究協力者は仕事で得られる報酬をすべて収入にしていいが、このカメラで、それができないときは録音、筆記でもいいから内容の記録をとって、研究所に持ち帰ること。それが条件だった。もちろんカメラはレンタルですと釘も刺された。

エルザは依頼主に連絡を取り、詳しい話をする場所と時間を聞いた。
時間は今日の午後、場所は首都クレドのオコーナーホテル。
オコーナーといえばリジャイナでも指折りの大ホテルである。どうやら依頼主が大物企業家だというのは本当らしい。
それにしてもこんなぼろ屋でオコーナーホテルで打ち合わせをする仕事が紹介されるとは、F・マーキュリー博士はいったい何者かと思わざるを得なかったが、当の本人はたまにエルザに振られると「ん」と返事を返すだけで、後は書類に没頭し続けていた。


研究所を出た4人は互いによそよそしい自己紹介を行った。
クルスはまだ仕事の内容が不安らしく、ぶつぶつ文句のような、愚痴のようなことを言っていた。何とかなるさ!と腹を決めたマルコに背中をどやされ、それにも文句を言っていた。
ジャニアスはとりあえず方針が決まり、一緒に行動する人もできたことで逆に安心し、呑気に空に浮かぶ巨大なガスジャイアント「アシニボイア」の縞の数なんぞを数えたりしていた。
ちなみにジャニアス以外の3人は、彼がどうやら貴族らしいということは分かったが、詳しく話を聞くとややこしそうだったのでその話題にはふれないようにしていた。

宙港街のファーストフード店で軽く食事をとり、首都クレドへ向かった。

空中にのびるパイプラインに乗り込み、リジャイナの町並みを眼下に望みつつ、一行はオコーナーホテルへやってきた。
シンプルだが趣味のよいデザインのビルにパイプラインから直接入り込み、指定された喫茶店へ。

ジャニアス以外はその高級感に少しおどおどしつつ、店に入ると、すぐにスーツを着込んだ背筋をピンと伸ばした上品そうな男が近寄ってきた。
「マーキュリー博士からお話はうかがっています。どうぞこちらへ。」
いったい4人のどこが目印になったのか、アリスには気になったが、男に案内されるままボックス席に落ち着いた。

男は依頼主の代理人だと名乗った。依頼人もここに来ているが、直接話しをして物別れになった場合、問題があるかもしれないのでとりあえずは代理人から話をするということだった。
アリスはますます気分が悪くなってきたが、自分が強引に話を進めた手前、ここは我慢することにした。

代理人の話は法律すれすれというより、法律違反そのものだった。
アンバー・ゾーンの惑星に赴き、そこの刑務所に捕らわれている人物を助け出してほしいというのだ。
洒落にならない話だったが、報酬も大きかった。中古だが完動品の2ジャンプができる自由貿易船がその報酬だというのだ。
4人は考え込んだ。自由貿易船が手に入ればこれからの人生を自分で切り開いてゆくことができるのだ。しかし刑務所とは・・・。

4人の様子を見て代理人は、これ以上の詳しい話は仕事を引き受けるという了解が無くては話せないと言った。確かに脱獄に関与したなぞどいう話が広まっては困るだろう。

最初にOKを出したのは、やはりアリスだった。
他の3人、特に真面目なマルコは反対したが、アリスのこんないい話はそうあるものではなく、依頼主もこんな話をするだけで危険を冒しているという説得に折れた。

更に詳しい話を聞く。
目的地は惑星ルー。ここに依頼主の一人息子が遺跡の調査に赴いていたが、現地の警察官に対する暴行容疑で捕まってしまい、今は刑務所に入れられている。
一行は依頼主の用意するチャーター船でルーに潜入。ターゲットを救出する。
必要な装備も依頼主がそろえる。ここでアリスの目が輝いた。彼の脳裏にはあれも欲しい、これも欲しいと、欲しいものリストが作られ始めていた。

更に詳しい打ち合わせを終え(と言っても現地での行動は一行に任されていた)会合は終わった。
席を立つ一行に代理人は最後に依頼主と引き合わせると言い、隣のボックス席に目をやった。

観葉植物の影になり、顔ははっきりとは分からなかったが、コーヒーカップをひょいと上げて挨拶した禿頭の依頼主はテレビや雑誌などで何度か目にしたメガコーポレーション「オベルリンズ運輸」社長、フィーリ男爵マルク・オート・オベルリンズに他ならなかった。

こうして偶然集まった一行は、TRAVELLERとしての冒険に一歩足を踏み入れたのだった。


ドンキホーテ商事の冒険 第1回 終了

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